リスティング広告代行で成果が出ない原因は「代理店選び」ではない

リスティング広告を代行に出しているのにCPAが下がらない、リードは来るが商談に繋がらない——そういう状態が続くと、「代理店を変えれば解決するのでは」という結論に向かいがちです。ただ、現場で設計を見直してきた経験から言うと、代理店を変えただけでは同じ問題が再発するケースが多いと感じています。

本質的な問題は別のところにあります。広告運用と事業データを繋ぐ実行設計の欠如です。

電通デジタル広告費調査によると、2024年の国内デジタル広告市場においてもリスティング広告(検索連動型広告)は依然として主力チャネルの地位を保ち、デジタル広告全体の約3割を占めています。規模が大きい分、「なんとなく動いている」状態のまま費用だけが積み上がっているケースも少なくありません。

Google広告のP-MAX(パフォーマンス最大化)や目標コンバージョン単価(tCPA)入札に代表されるAI自動入札が標準化した今、代行会社の価値は「キーワード管理と入札調整」から「AIに渡すデータ設計と事業数値との統合」へと移っています。この記事では、代行会社の比較・選び方ではなく、AI自動入札時代に求められる「データ設計×実行統合」の視点を軸に、成果が変わる設計とそうでない設計の違いを実務レベルで整理します。

この記事で扱う視点について

よくある「代行会社○選」や「手数料相場は広告費の○%」という切り口ではなく、すでに代行に出していて「施策は動いているのに事業インパクトが出ていない」状態を変えるための判断材料を提供することを目的としています。月額100万円以上のリスティング広告を動かしている担当者・責任者の方を想定しています。

リスティング広告代行の現場で起きている3つの構造的な問題

代行を続けているのに成果が伸び悩む状況には、再現性のある構造的な問題が3つあります。これらは代行会社の能力の問題というより、設計と役割分担の問題として理解する方が正確です。

問題①:AIに渡すCVデータが「事業的に正しくない」

Google広告のAI自動入札は、渡されたコンバージョン(CV)データを学習素材として動きます。問い合わせフォームの送信やホワイトペーパーのダウンロードをCVとして設定している場合、AIはそのアクションを起こしやすいユーザーに最適化します。しかし、それが商談化・受注に繋がるユーザーと一致しているかどうかは、データとして繋がっていなければわかりません。

現場でよく起きているのは、「フォーム送信数は増えているが、商談化率が下がっている」という状態です。CVが増えているように見えて、AIは実は事業的に価値の低いユーザーを集めている方向に最適化されていた、というケースです。

問題②:LPとリスティング運用を別ベンダーに分けることで最適化が分断される

リスティング広告の運用を代行Aに、LP(ランディングページ)の改善をベンダーBに分けて発注している体制は珍しくありません。ただこの構造には見えにくいコストがあります。LP側でCVRが改善されても、その変化が広告側の自動入札の学習に反映されるまでにはタイムラグが生じます。また、LPの改善がどのキーワード・広告グループの成果に効いたのかを、両社が別々に管理していると追えなくなります。

結果として、「CVRが上がったのに広告のCPAが変わらない」という状態が続くことがあります。

問題③:オフラインデータが広告に戻っていない

BtoBやリード獲得型のビジネスでは、問い合わせ後の商談・受注というオフラインのイベントが事業的に重要なCVです。しかし多くのケースで、これらのデータはCRMやSFAに蓄積されたまま、Google広告のアカウントには戻されていません。

広告側では「フォーム送信」しか見えていない状態のまま、AIが最適化を続けているわけです。商談・受注に繋がりやすい問い合わせと、そうでない問い合わせの違いをAIが学べる環境を作ることが、精度向上の鍵になります。

AI自動入札が「間違った方向」に最適化する仕組みを理解する

Google広告のP-MAX(パフォーマンス最大化キャンペーン)や目標コンバージョン単価(tCPA: target Cost Per Acquisition)入札は、渡されたCVデータをもとにシグナルを学習し、入札を自動制御します。この仕組みの前提として、「渡すCVデータが事業的に正しい」ことが必要です。正しくないデータを渡すと、AIは正しくない方向に精度を高めていきます。

「CVが多い=AIが賢くなる」ではなく、「質の高いCVが多い=AIが正しい方向に賢くなる」という理解が出発点になります。

P-MAXで成果が安定しない案件に共通していたデータの問題

P-MAXは検索・ディスプレイ・YouTube・Gmailなど複数の面を横断して自動的に最適化するキャンペーン形式です。これは「データ次第で成果が大きく変わる」という特性を意味します。

P-MAXで成果が安定しない案件を見ると、CVデータの構造に共通した問題があることが多いです。

  • CVの粒度が粗い:フォーム送信の全件がCVとして計上されており、資料請求と採用応募と問い合わせが区別されていない
  • CVの量が不足している:月間CV数が30件を下回っており、AIの学習に必要なデータ量を確保できていない(Googleは月間50件以上を推奨)
  • オフラインCVが未設定:商談・受注データがGoogle広告に戻されておらず、AIが「フォーム送信で終わり」の世界しか見えていない

BtoB・リード獲得領域では、Google広告の拡張コンバージョン(Enhanced Conversions)を使ってCRMの商談・受注データをGoogle広告に戻す設定が、自動入札の精度を変える重要な施策です。フォーム送信だけでなく、商談化・受注という事業的に意味のあるCVをAIが学べるようになることで、集客の質が変わり始めます。

この設定は技術的には可能ですが、CRM側のデータ整備・連携設計が必要なため、広告運用だけを担う代行会社では対応範囲外になるケースが多いのが現状です。

LP改善とリスティング運用を分断させると何が起きるか

「広告はA社、LPはB社」という体制は、一見すると専門分業のように見えますが、実際には最適化の情報が分断されるリスクを持っています。

統合対応でCVRと自動入札精度が両方変わった事例の構造

分断が起きているケースと統合されているケースで、どんな違いが生まれるかを整理します。

分断されたケース(よく起きていること)

  1. LPのCTAボタンの文言・配置を改善し、CVRが1.2%から1.8%に変化
  2. この改善はLP側のツール(ヒートマップ・ABテスト)では確認できる
  3. しかし広告側では、同期間にキャンペーンの学習がリセットされていたり、CV計測がフォーム送信の全件になっていたりして、改善の効果が自動入札の学習に正確に反映されない
  4. 「CVRは上がったはずなのにCPAが変わらない」という状態が続く

統合されているケース

  1. LP改善と広告運用を同じチームが担当し、ABテスト(複数パターンの比較検証)の設計段階から広告の入力データを意識した計測設計を行う
  2. CVRの改善が確認できたタイミングで、自動入札のtCPA目標を調整し、新しいCVR水準に合った入札設計に切り替える
  3. 改善したLP版に流入を集中させるようキャンペーン設定も同時に見直す

統合対応では、LPの改善インパクトが広告の自動入札精度に反映されるサイクルを作れます。分断されているとLPの改善が広告の最適化に繋がらず、LP担当者は「CVRが上がった」と報告し、広告担当者は「CPAが変わっていない」と報告する、という状況が生まれます。どちらも嘘ではないのですが、事業としての成果には繋がっていないわけです。

LPの改善とリスティング運用を同一の視点で回すには、ABテストの計測設計・Google広告のCV設定・自動入札の調整を一体で考える体制が必要です。

リスティング広告代行会社を評価する判断材料:比較の視点

代行会社を評価するときに使える比較の視点を整理します。「どちらが良い」という断定ではなく、自社の現状と照らし合わせて判断する材料として使ってください。

比較軸 一般的な運用代行 データ設計×実行統合型
CVデータ設計の関与 広告アカウント内のCV設定まで CRMとの連携・オフラインCV設計まで含む
LP改善との連携 基本的に対象外 LP改善・ABテストと一体で設計
オフラインCV設定 経験・対応なし 拡張コンバージョン設定の実績あり
自動入札の設計判断 tCPA目標の調整のみ データ基盤の準備状況を判断して設計
レポートの粒度 クリック数・費用・CV数 商談化率・受注CPAなど事業KPIまで

現在の代行会社を評価するための5つの確認ポイント

以下の5点を現在の代行会社に確認することで、どこに問題があるかが見えてきます。

① CVの定義を一緒に見直した経験があるか フォーム送信だけでなく、商談・受注などの事業的なゴールを踏まえてCV設定を設計した経験があるか確認します。「広告アカウントの設定はこうなっています」という報告だけで終わっている場合、データの質の議論がされていない可能性があります。

② アカウントの所有権はどこにあるか 広告アカウントがクライアント側(自社)に紐づいているか、代行会社側に紐づいているかを確認します。代行会社所有の場合、切り替え時にアカウント履歴・学習データがすべて失われます。

③ 自動入札の設計判断について説明を受けているか P-MAXやtCPAの設定を「なぜそうしているか」の判断基準を代行会社が説明できるかどうかは、データを見て動いているかどうかの指標になります。

④ LPの改善提案が出てくるか 広告のCTRが高いのにCVRが低い場合、問題はLP側にあることがほとんどです。広告側だけを調整する提案しか出てこない場合、最適化の視野が広告アカウント内に閉じている可能性があります。

⑤ レポートに事業KPIが含まれているか クリック数・費用・CV数だけのレポートは、広告の動きを見ているだけです。商談化率・受注CPA・ROAS(広告費用対効果)まで繋がったレポートが出てきているかどうかが、代行会社の視野の広さを示します。

代行会社を切り替える前に確認すること:学習期間リセットのリスク

代行会社の切り替えを検討するとき、見落とされがちなコストがあります。アカウントの履歴と自動入札の学習データのリセットです。

Google広告の自動入札(tCPA、目標広告費用対効果など)は、過去のCVデータを学習して精度を上げていきます。新しいキャンペーンを作り直したり、アカウントを移行したりすると、この学習がリセットされ、再び安定するまでに平均で3〜6ヶ月の成果低下リスクが生じます。切り替えのタイミングが繁忙期と重なると、その期間の機会損失が大きくなります。

切り替えコストを抑えながら改善に動いた場合の進め方

「代行会社を変えれば解決する」と判断する前に、以下を確認することを勧めます。

まずアカウントの所有権を確認する

アカウントが自社に紐づいていれば、代行会社を変えてもアカウント履歴・学習データは引き継げます。代行会社所有の場合は切り替えコストが跳ね上がるため、まず所有権の移管交渉が先になります。

切り替えを判断すべき状況

  • アカウント所有権が自社にあり、CV設計・LP連携の改善提案を求めても動かない
  • レポートが広告数値だけに閉じており、事業KPIへの接続を議論できない
  • 半年以上、改善の方向性についての提案がない

現行維持で改善を試みるべき状況

  • アカウント所有権が代行会社側にあり、移管交渉が必要なケース(まず移管を進める)
  • CV設計やLP連携について提案を求めていない、または議題に上がっていない
  • 切り替えのタイミングが繁忙期・大型施策の直前

「設計の問題」であれば、現行の代行会社と一緒に設計を見直すことで解決できるケースも実際に多くあります。切り替えは最後の手段として、まず「何が問題か」を設計レベルで特定することが先です。

成果が変わり始めたときに何が変わっていたか:実行の記録

curumiがBtoB・リード獲得型の案件で実際にリスティング広告×データ設計の見直しを行った際の記録を、当事者として整理します。一次情報としてお伝えできる内容を共有します。

BtoB案件でオフラインCVを広告に戻した際に見えたこと

ある月額広告費が複数百万円規模のBtoB SaaS案件で、フォーム送信数は月間100件を超えているにもかかわらず、商談化率が15%前後で止まっており、CPAは改善傾向を示さないという状態がありました。

私たちが最初にやったのはCV設定の棚卸しです。確認した結果、以下の状態でした。

  • フォーム送信の全件がCVとして計上されていた(サポート問い合わせ・採用応募・資料請求が混在)
  • CRMには商談ステータス・受注データがあったが、Google広告とは未連携
  • 自動入札はtCPAで動いており、「フォーム送信=CV」として学習を続けていた

ここから以下の順序で動きました。

  1. CVの定義を事業側と合わせる:資料請求のみをGoogle広告のCVとして設定し直し、サポート問い合わせ・採用応募を除外
  2. 拡張コンバージョンの設定:CRMから商談化データをGoogle広告にアップロードする仕組みを作り、商談CVをセカンダリCVとして設定
  3. 学習期間を確保しながら自動入札を調整:CV定義の変更でCVが一時的に減少するため、tCPAの目標を一時的に緩め、学習の安定を優先
  4. LP側と同期:LPの訴求軸を見直し、資料請求に繋がりやすいユーザー像に合わせたコンテンツ改善をABテストで検証

正直に言うと、CV定義を変えた直後は月間CV数が100件から40件前後に下がり、数字だけ見ると悪化したように見えました。この期間は社内説明が難しかったです。ただ、商談化率は40件中30%前後まで変化し、商談数の絶対数が維持・微増という状態に移行しました。

3ヶ月後、自動入札が新しいCV定義に慣れてきた段階で、CPAは以前の水準に対して改善傾向が見えてきました。「CVが減った」のではなく「事業的に意味のあるCVに絞った」という判断が正しかったと確認できた経験でした。

途中で判断を変えた場面もあります。ABテストの設計を最初にシンプルに設定しすぎて、LP改善の効果が広告の自動入札に反映されるサイクルを作るのに時間がかかりました。LP改善と広告の設計変更は同時並行ではなく、段階的に進める方が学習の安定を保ちやすいと、この案件で学びました。

リスティング広告代行に関するよくある質問

Q: リスティング広告代行の手数料(広告費の○%)は妥当な水準ですか?

A: 手数料の水準の妥当性は、何に対してフィーを払っているかで変わります。広告費の20%を払っていても、CV設計・LP連携・オフラインCV統合まで対応しているなら投資対効果は高い可能性があります。逆に10%でも、キーワード調整と入札管理のみで事業KPIへの接続がなければ、費用対効果は低いかもしれません。手数料の高低より、「その代行会社が何に手を動かしているか」を確認する方が判断材料として有効です。

Q: 代行に任せるとアカウントの知見が社内に溜まらないのでは?

A: これは正当な懸念です。ブラックボックス化を防ぐには、代行会社に対して「レポートの項目・説明の仕方」を最初に合意することが有効です。具体的には、「どのキーワードで・なぜその入札にしているか」「CVデータの定義と根拠」「自動入札の設計判断」を月次レポートと定例で説明してもらう体制を作ることです。また、アカウントへのアクセス権(管理者権限)を自社で持つことは最低限の条件として確認してください。

Q: P-MAXを使いたいが代行会社が消極的です。どう判断すればいいですか?

A: P-MAXの活用判断は、データ基盤の準備状況に依存します。代行会社が消極的な理由として、「管理しにくい」「透明性が低い」という理由もありますが、「CVデータが整っていないと逆効果になる可能性がある」という正当な判断もあります。確認すべきは、「CVの定義は事業的に正しいか」「月間CV数は50件以上確保できているか」「オフラインCVの設定はできているか」の3点です。これらが整っていればP-MAXを試す準備はできています。消極的な代行会社に対してはデータ基盤の状況を確認した上で、「この3条件が揃ったらP-MAXに移行する」という合意を取ることを勧めます。

Q: SNS広告とリスティング広告を同じ代行会社に任せるべきですか?

A: チャネルをまたいで見ている会社とそうでない会社には明確な差があります。リスティング広告は「今すぐ欲しい」顕在層を捉え、SNS広告は「まだ検索していない」潜在層にアプローチするという役割の違いがあります。この2つを別会社に分けた場合、リスティングで転換しなかったユーザーへのSNS広告でのリターゲティング(Google広告では「リマーケティング」とも呼ばれます)設計や、チャネル間のアトリビューション把握が難しくなります。同一会社で担当できれば横断設計がしやすくなりますが、それ以上に「どちらのチャネルも深く動かせるか」の実力を見ることが先です。

まとめ:リスティング広告代行に求める視点を変える

この記事で繰り返してきた核心は一つです。「誰に任せるか」より「どんなデータ設計で動かすか」が、リスティング広告の成果の分岐点になります。

AI自動入札時代に代行会社に求める役割の変化

Google広告のAI自動入札が標準化した現在、代行会社に求められる役割は変わっています。

以前の代行の価値 現在求められる価値
キーワード選定・除外設定 CVデータの定義と設計
入札単価の手動調整 自動入札設計の判断と説明
広告文のABテスト LPとの統合改善サイクル
クリック・費用のレポート 商談化・受注CPAまでの可視化
広告アカウント内の最適化 オフラインCVの統合設計

今すぐ確認できる出発点

読者の方に今日から動けることを一つ挙げるとすれば、現在のリスティング広告のCV設定を確認することです。

  • 何をCVとして設定しているか
  • それは事業的に意味のあるアクションと一致しているか
  • 商談・受注データがGoogle広告に戻されているか

この3点が見えると、何が問題でどこから手を付けるべきかの輪郭が出てきます。

curumiでは、CV設計の現状確認から、オフラインCVの統合設計、LP改善との連携まで、一緒に設計を組みながら動くことができます。「まずこの状態を見てほしい」という段階から一緒に考えることができます。

広告の数字だけを見ている状態から、事業の数字を動かす設計に変えること——そのための判断材料を揃えることから、一緒にやりましょう。

SNS広告との連携設計や、LP・CVR改善の実務については関連記事も参考にしてください。