ROAS計算は「何を分子・分母に入れるか」で結論が変わる
広告費を月100万円使って売上500万円が立った。ROAS(Return On Advertising Spend=広告費用対効果)は500%——計算自体はシンプルです。しかし、その500万円に「既存顧客のリピート購入」が含まれていたら?広告費に「制作費」や「運用手数料」が含まれていなかったら?同じ施策でも、分子と分母の定義が変わるだけでROASは300%にも800%にもなります。
実は、ROAS計算の公式そのものは単純な割り算に過ぎません。問題は「何を分子に入れるか」「何を分母に入れるか」の定義設計にあります。ここを曖昧にしたまま数字だけ見ていると、利益が出ていない施策を好調と誤認したり、本来伸ばすべきチャネルを止めてしまったりする判断ミスにつながります。
この記事では、ROAS計算の基本公式に加えて、ROI・CPA(Cost Per Acquisition=顧客獲得単価)との違い、実務で陥りがちな定義の落とし穴、オフラインCV(コンバージョン)やLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)を組み込んだ計算設計までを一気に解説します。読み終える頃には、自社の広告投資の意思決定に使えるROAS設計の判断基盤が手に入ります。
ROAS計算の基本公式と各要素の定義
ROAS計算の基本公式
ROAS計算の基本公式は以下の通りです。
ROAS(%)= 広告経由売上 ÷ 広告費 × 100
たとえば、ある月の広告費が100万円、その広告経由で発生した売上が500万円であれば、ROASは500%です。広告費1円あたり5円の売上が立った、という意味になります。
実務で迷いやすい「定義」の重要性
この公式はシンプルですが、実務で迷うのは「広告経由売上」と「広告費」それぞれの範囲をどう区切るか、という定義の部分です。定義がズレたまま計算すると、チーム内で数字が合わない、経営会議で報告するROASと現場のROASが食い違う、といった問題が起きます。
「広告経由売上」をどこまで含めるかの判断基準
ROAS計算の分子となる「広告経由売上」の定義は、アトリビューション(貢献の帰属)の考え方に直結します。主な論点は以下の3つです。
ラストクリックかアシストコンバージョンか
- ラストクリックのみ含めるか、アシストコンバージョンも含めるか:ラストクリック計測だけだと、最後にクリックされた広告だけが売上の貢献先になります。しかし実際には、最初にSNS広告で認知し、後日リスティング広告で購入するケースは多いです。アシストコンバージョンを含めないと、認知段階の広告のROASは実態よりも低く出ます
アトリビューションモデルの選択による数値変動
- アトリビューションモデルの選択がROAS数値に直結する:Google広告ではラストクリック、線形、データドリブンなど複数のアトリビューションモデルが選べます。データドリブンモデルに切り替えるだけで、同じ広告キャンペーンのROASが20〜30%変動するケースもあります
クロスデバイス・クロスチャネルの売上の扱い
- クロスデバイス・クロスチャネルの売上をどう扱うか:スマホで広告をクリックし、PCで購入するパターンは少なくありません。この売上を広告経由に含めるかどうかで、特にモバイル広告のROASは大きく変わります
定義を決めるときに大事なのは「正解を探す」ことではなく、「社内で1つの基準に揃える」ことです。基準がバラバラだと、どの数字も信用できなくなります。
「広告費」に含める範囲の考え方
広告費に含める項目の範囲とROASへの影響
ROAS計算の分母となる「広告費」にも定義の幅があります。同じ施策でも、含める範囲によってROASは変わります。
| 含める項目 | 例 | ROASへの影響 |
|---|---|---|
| 媒体費のみ | Google広告・Meta広告(旧Facebook広告)への出稿費 | ROASは高く出る |
| 媒体費+制作費 | バナー制作・動画制作・LP制作費を加算 | ROASはやや下がる |
| 媒体費+制作費+運用手数料 | 代理店手数料・ツール費用を加算 | ROASはさらに下がる |
たとえば、媒体費だけで計算するとROAS 500%だった施策が、制作費と運用手数料を含めると350%まで下がる、というのはよくある話です。
社内での定義統一が経営判断の信頼性を左右する
社内で「広告費」の定義を統一しないと、マーケティング部門と経営企画部門で見ている数字が食い違います。報告先によってROASが変わる状態は、経営判断の信頼性を損ねます。私たちがクライアントと一緒に設計するときは、まずこの分母の定義を揃えるところから始めます。
ROAS・ROI・CPAの違いと使い分け
ROAS計算を正しく使いこなすには、関連指標であるROI(Return On Investment=投資利益率)やCPA(Cost Per Acquisition=顧客獲得単価)との違いを理解しておく必要があります。それぞれ「見ているもの」が異なるため、使い分けを間違えると判断を誤ります。
| 指標 | 計算式 | 見ているもの | 適した場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ROAS | 広告経由売上 ÷ 広告費 × 100 | 売上ベースの広告効率 | EC・D2Cなど売上が直接計測できる事業 | 原価を考慮しないため利益は見えない |
| ROI | (利益 − 広告費)÷ 広告費 × 100 | 利益ベースの投資効率 | 原価率が高い商材、利益管理が重要な事業 | 利益の定義(粗利・営業利益)で数値が変わる |
| CPA | 広告費 ÷ コンバージョン数 | 1件あたりの獲得コスト | BtoBリード獲得、単価が均一な商材 | 売上規模の視点が抜ける |
事業フェーズ別の選び方として、立ち上げ期はCPAで獲得効率を見ながらチャネルを選び、成長期はROASで売上貢献を評価し、成熟期にはROIで利益への貢献度を重視する——という流れが判断材料として使えます。ただし、1つの指標だけで判断するのではなく、複数の指標をセットで見る運用が現場では有効です。

ROASが高いのに利益が出ないケースの見分け方
ROASが良い数字に見えても、利益が出ていないケースは珍しくありません。その見分け方を具体例で示します。
ROAS 300%でも赤字になる具体例
具体例:ROAS 300%でも赤字になるケース
- 商品売上:300万円
- 広告費:100万円
- ROAS:300%(一見すると好調)
- 原価率:70%(原価210万円)
- 粗利:300万円 − 210万円 = 90万円
- 広告費を差し引くと:90万円 − 100万円 = −10万円(赤字)
このように、原価率が高い商材ではROAS 300%でも利益はマイナスです。送料・返品率・決済手数料を含めるとさらに粗利は圧縮されます。
ROASだけで広告の良し悪しを判断すると、売上は立っているのに利益が残らない「売れば売るほど赤字」の状態に気づけません。粗利ベースで検証する習慣が、正しい投資判断の第一歩です。
粗利ベースのROIで検証する対策
対策としては、ROAS確認と同時に「粗利ベースのROI」を算出することです。粗利率が商品カテゴリによって異なる場合は、カテゴリ別にROASとROIを出し分ける運用が有効です。

ROAS計算で実務担当者が陥りがちな3つの落とし穴
ROAS計算の公式は知っていても、実務で正しく運用できている企業は意外と少ないです。私たちが広告運用の現場で何度も見てきた、陥りがちな落とし穴を3つ共有します。
落とし穴①:管理画面のCV値をそのまま売上として使ってしまう
落とし穴①:管理画面のCV値をそのまま売上として使ってしまう
Google広告やMeta広告の管理画面に表示される「コンバージョン値」は、実際の売上と一致するとは限りません。キャンセル・返品が反映されていなかったり、計測タグの発火条件にズレがあったりすると、管理画面のROASと実際のROASに乖離が生まれます。
落とし穴②:新規顧客と既存顧客を混ぜたROASで判断してしまう
落とし穴②:新規顧客と既存顧客を混ぜたROASで判断してしまう
全体のROASが良くても、その中身が「既存顧客のリピート購入」に偏っていれば、新規獲得の効率は見えません。リピーターが広告経由で買い直しているだけで、新規顧客は増えていない——という状態に気づかないまま「ROASが良いから広告を増額しよう」と判断してしまうケースがあります。
落とし穴③:計測期間が短すぎて後日購入が反映されていない
落とし穴③:計測期間が短すぎて後日購入が反映されていない
BtoBや高単価商材では、広告クリックから購入・成約まで数週間〜数ヶ月かかることがあります。クリックから7日以内のCVだけで判断すると、後日コンバージョンが拾えず、ROASが実態より低く出ます。
管理画面の数値と実売上のズレを検知する方法
管理画面のコンバージョン値と実売上のズレを放置すると、ROASの数字そのものが信用できなくなります。以下の手順で乖離を検知し、定義を見直す運用を組み立てます。
乖離検知の3ステップ
- CRM・基幹システムから月次の実売上データを抽出する:広告経由の注文IDや顧客IDを軸に、実際の入金額・キャンセル後の純売上を集計します
- 広告管理画面のコンバージョン値と突き合わせる:同じ月のデータを比較し、乖離率(=(管理画面CV値 − 実売上)÷ 実売上 × 100)を算出します
- 乖離率が15%を超えたら定義・計測設定を見直す:タグの発火条件、アトリビューションウィンドウの設定、返品・キャンセルの反映タイミングを確認します
月次で乖離率を追い続ける重要性
乖離率は月次で追い続けることが大事です。季節変動やキャンペーン時期に乖離が大きくなることもあるため、単月の数字だけで判断せず、3ヶ月の推移で傾向を見ます。
新規顧客ROASと既存顧客ROASを分けて計算する考え方
全体ROASだけを見ていると、新規獲得の実態が隠れてしまいます。新規と既存を分けてROASを算出することで、広告投資の判断精度が上がります。
新規・既存を分離する手順
分離の手順:
- CRMやECカートのデータで「初回購入(新規)」と「2回目以降(既存)」を顧客IDベースで分類する
- 広告経由の売上を新規・既存それぞれに振り分ける
- 広告費の按分ルールを決める(キャンペーン単位で分けられる場合はそのまま、混在している場合はCV数比率で按分)
- 新規ROASと既存ROASをそれぞれ算出する
新規ROASを活用すべき場面
新規だけのROASを使う場面:
- 広告予算の増減を判断するとき(新規獲得効率が下がっているなら、増額してもLTVで回収できるか検証が必要)
- 新しいチャネルやキャンペーンのテスト評価をするとき
- 既存顧客のリピート施策はCRM側の指標で評価し、広告のROASからは分離したいとき
全体ROASが500%でも、新規だけで見ると200%だった——という数字が出ると、投資判断は変わります。
オフラインCVを含めたROAS計算の設計方法
オフラインCVを計測に含める必要性
オフラインCV(来店購入・電話問い合わせ・後日の商談成約など)を広告のROAS計算に含めないと、広告の実際の貢献度は過小評価されます。特にBtoBや店舗型ビジネスでは、オンラインで計測できるCVだけがすべてではありません。
Google広告には「オフラインコンバージョンインポート」という機能があり、CRMに記録された成約データを広告のクリックIDと紐づけてインポートできます。これにより、広告クリック→後日商談→成約、という一連のプロセスを広告のコンバージョンとして計測に組み込めます。
GCLIDを活用した基盤設計の概要
基盤設計の概要:
- 広告クリック時のGCLID(Google Click Identifier)をフォーム送信時に取得・保存する
- CRM上で顧客のステータス変化(商談化・成約・売上計上)を記録する
- 成約時の売上データをGCLIDと紐づけてGoogle広告にインポートする
- インポートされたデータがROAS計算に反映される
この仕組みを構築すると、オンラインCVだけでは見えなかった広告のROASが正確に計測できるようになります。詳しい構築手順はオフラインCV基盤構築の解説記事で紹介しています。
オフラインCV計測が自動入札の精度を変える理由
目標ROAS入札とコンバージョンデータの関係
Google広告の「目標ROAS入札」は、広告主が設定したコンバージョン値を学習データとして使い、入札額を自動調整する仕組みです。つまり、渡すコンバージョンデータの精度が、そのまま自動入札の精度に直結します。
オフラインCVを含めないと起きる学習データの偏り
オフラインCVをインポートしない場合、自動入札のアルゴリズムは「オンラインで完結したCVだけ」を学習データとして使います。その結果、実際には売上に大きく貢献している広告クリック(後日商談→高額成約)が低評価のままになり、予算が売上貢献度の低い広告に寄ってしまいます。
データ基盤の構築がAI時代の広告運用の核心
正しいデータを正しく渡す——これがAI時代の広告運用における基盤設計の核心です。自動入札の精度は、アルゴリズムの優劣ではなく、インプットするデータの質で決まります。
私たちcurumiが取り組んでいるのは、このコンバージョンデータ基盤の構築支援と、その基盤の上での広告運用の統合です。基盤がなければ自動入札は「不完全なデータで最適化しているだけ」の状態になり、ROAS改善にも限界が出ます。
LTV(顧客生涯価値)を加味したROAS計算で投資判断が変わる
初回購入のROASだけで広告のオン・オフを判断すると、LTVが高い顧客を獲得しているチャネルを見逃すリスクがあります。特にサブスクリプション型やリピート商材では、初回のROASが低くても、半年・1年単位のLTVで見ると十分な投資対効果が出ているケースは多いです。
LTVベースROASの計算式と具体例
LTVベースROASの計算式:
LTVベースROAS(%)= LTV × 広告経由の新規顧客数 ÷ 広告費 × 100
たとえば、LTV中央値が5万円の商材で、広告費200万円を使って100人の新規顧客を獲得した場合:
- 初回購入ROASが150%(初回売上300万円 ÷ 広告費200万円)で「低い」と判断していたとしても
- LTVベースROASは250%(5万円 × 100人 ÷ 200万円)まで上がります
暫定LTVを使った現実的な運用方法
LTVが確定するまでの期間は商材によって異なりますが、全顧客のLTVが確定するのを待っていては判断が遅れます。過去データから算出した「暫定LTV(3ヶ月時点のLTV中央値など)」を使い、定期的に更新する運用が現実的です。
LTVベースROASを使った広告投資の意思決定フロー
LTVベースのROASを使って広告投資を判断する具体的なフローを、3ステップで整理します。
Step1:過去データからLTV中央値を算出する
- Step1:過去データからLTV中央値を算出する
- 直近12ヶ月の顧客データを使い、獲得チャネル別・顧客セグメント別にLTV中央値を出します
- 中央値を使うのは、一部の高額顧客に引っ張られる平均値よりも実態を反映しやすいためです
Step2:チャネル別にLTVベースROASを計算する
- Step2:新規獲得チャネル別にLTVベースROASを計算する
- チャネルごとに「LTV中央値 × 新規顧客数 ÷ 広告費」でROASを算出します
- 初回ROASでは評価が低かったSNS広告やディスプレイ広告が、LTVベースでは上位に来ることがあります
Step3:許容ROASラインの設定と予算再配分
- Step3:許容ROASのラインを設定し、チャネル別に予算を再配分する
- 損益分岐ROAS(後述)をベースに、LTVベースでの許容ラインを設定します
- 許容ライン以上のチャネルに予算を寄せ、下回るチャネルはクリエイティブやターゲティングの改善を試みます
このフローを月次で回すと、初回ROASだけの判断では予算が減らされていたチャネルが復活し、結果として新規獲得の総量が増えた——という変化が見えてきます。
ROAS計算の目標値を決める実務ステップ
ROAS計算ができても、目標値がなければ判断基準になりません。目標ROASは「損益分岐ROAS」を起点に設定します。
目標ROAS設計で確認すべき3つのポイント
私たちがクライアントと一緒に目標ROASを設計するとき、まず聞くのは以下の3つです。
- 原価率(粗利率):商材の粗利がいくら残るか
- リピート率:1回きりの購入か、リピートが見込めるか(LTV視点)
- 回収期間:広告投資をいつまでに回収する必要があるか
この3つが揃えば、損益分岐ROASから逆算して現実的な目標値を設定できます。
事業フェーズ別の目標ROAS設定
事業フェーズ別の考え方:
- 立ち上げ期:損益分岐ROASを下回っていてもCPA上限を決めて投資する判断もある。データを貯めてLTVを見極めるフェーズ
- 成長期:損益分岐ROASの1.3〜1.5倍を目標に設定し、利益を確保しながら拡大する
- 成熟期:チャネル別・商品カテゴリ別に目標ROASを細分化し、効率の悪い領域を縮小して全体利益を最大化する
目標ROASは「一度決めたら固定」ではなく、月次で更新するのが私たちのやり方です。原価率の変動、LTVの実績値、競合環境の変化によって損益分岐点は動きます。
損益分岐ROASの計算例
損益分岐ROASの公式と計算例
損益分岐ROASとは、「広告費を回収するために最低限必要なROAS」のことです。粗利率から逆算します。
損益分岐ROAS(%)= 1 ÷ 粗利率 × 100
計算例:粗利率30%の場合
- 損益分岐ROAS = 1 ÷ 0.30 × 100 = 約333%
- つまり、ROAS 333%以上でなければ広告費を回収できません
粗利率別の損益分岐ROAS一覧
粗利率別の損益分岐ROAS一覧:
| 粗利率 | 損益分岐ROAS |
|---|---|
| 20% | 500% |
| 30% | 333% |
| 40% | 250% |
| 50% | 200% |
| 60% | 167% |
| 70% | 143% |
実質粗利率を使う重要性とLTVとの併用判断
ここで注意したいのは、「粗利率」の計算に物流コスト・決済手数料・返品コストを含めた「実質粗利率」を使うことです。名目の粗利率40%でも、送料負担や返品率を含めると実質30%、というケースは少なくありません。
損益分岐ROASを下回るチャネルは即停止が基本ですが、LTVを加味すると回収可能な場合もあります。その場合は、前述のLTVベースROASと合わせて判断します。

ROAS計算に関するよくある質問
Q: ROASは何パーセントあれば良いですか?
A: 一概に「〇〇%以上」とは言えません。ROASの良し悪しは、商材の粗利率とLTVに依存します。粗利率30%なら損益分岐ROASが約333%なので、少なくとも333%以上が必要です。粗利率60%なら167%で損益分岐を超えます。まずは自社の粗利率から損益分岐ROASを算出し、そこを基準にして判断してください。
Q: Google広告の「コンバージョン値/費用」はROASと同じ意味ですか?
A: 基本的に同義です。Google広告の管理画面で表示される「コンバージョン値/費用」は、設定されたコンバージョン値を広告費で割った数値です。ただし、コンバージョン値の設定が実際の売上と一致していなければ、表示されるROASも実態とは異なります。タグ設定やコンバージョン値の正確性を確認した上で参照してください。
Q: ROASとCPAはどちらを見るべきですか?
A: 商材の単価にバラつきがある場合はROASが適しています。1件1,000円の商品と1件10万円の商品が混在するECでは、CPAだけでは売上への貢献度が見えません。一方、BtoBのリード獲得のように1件あたりの単価が比較的均一な場合は、CPAでも十分に判断できます。両方を併用し、CPAで獲得効率を、ROASで売上貢献を見るのが実務的です。
Q: SNS広告のROASがリスティング広告より低く出るのはなぜですか?
A: ラストクリック計測の場合、SNS広告は認知・検討段階で接触しているにもかかわらず、最後のクリック(多くの場合リスティング広告や自然検索)にCVが帰属するためです。SNS広告の実際の貢献度は、ラストクリックのROASだけでは正確に測れません。対処法は次のセクションで解説します。
SNS広告のROASが低く見える問題への対処法
SNS広告のROASがリスティング広告より低く出る問題は、計測方法の構造的な課題です。以下の3つのアプローチで対処できます。
ビュースルーCV・アシストCVを含めた計測設計の見直し
1. ビュースルーCV・アシストCVを含めた計測設計の見直し
Meta広告の管理画面では「ビュースルーコンバージョン」(広告を見たが、クリックせずに後日CVした件数)が確認できます。これを含めると、SNS広告のROASは改善することが多いです。ただし、ビュースルーCVを含めすぎると過大評価になるため、計測ウィンドウ(1日・7日・28日)の設定が重要です。
SNS広告とリスティング広告のROASを単純比較しない
2. SNS広告とリスティング広告のROASを単純比較しない
SNS広告は認知・興味喚起の役割が強く、リスティング広告は顕在ニーズの刈り取りが主です。役割が異なるチャネルを同じROAS基準で比較すると、認知チャネルが常に「成績が悪い」と評価されてしまいます。チャネルごとに異なる目標ROASを設定するのが合理的です。
ブランドリフトやCVパス分析を判断材料に加える
3. ブランドリフトやCVパス分析を判断材料に加える
SNS広告停止前後のブランド検索数の変動や、CVに至るユーザーの接触チャネルパス分析を行うと、SNS広告の間接的な貢献が可視化されます。SNS広告を止めた途端にリスティング広告のCV数も落ちた——という経験は、SNS広告の評価を見直す判断材料になります。
SNS広告運用の詳しい設計方法も参考にしてください。
まとめ:ROAS計算は定義の設計から始まる広告投資の判断基盤
ROAS計算の公式は「広告経由売上 ÷ 広告費 × 100」というシンプルな割り算です。しかし、何を分子に含め、何を分母に含めるかの定義設計が、広告投資の意思決定の質を左右します。
この記事のポイントを整理します:
- 「広告経由売上」はアトリビューションモデルの選択で数値が変わる。社内で定義を統一することが出発点
- 「広告費」に制作費や手数料を含めるかで、同じ施策でもROASは変動する
- ROASが高くても粗利を確認しないと赤字の可能性がある。ROIとセットで見る
- 管理画面のCV値を鵜呑みにせず、CRMデータとの突き合わせで乖離を検知する
- オフラインCVをインポートすることで、実態に近いROASが計測でき、自動入札の精度も上がる
- LTVを加味したROAS計算で、初回ROASでは見えなかった広告の投資効果が見えてくる
- 目標ROASは粗利率から損益分岐ROASを算出し、事業フェーズに合わせて月次で更新する
正しいデータを正しく渡す基盤設計から、ROAS改善を一緒に動かしたい方は、まず現状の計測環境の棚卸しから始めてみてください。私たちcurumiは、コンバージョンデータ基盤の設計から広告運用の実行まで一貫して伴走しています。
参考文献: