AI広告とは?AIが作る広告とAIが配信する広告

AI広告とは、生成AIで広告のクリエイティブを作る取り組みと、AIに広告の配信を任せる取り組みを、まとめて呼んだ言葉です。呼び方は一つでも、担当者の手元で起きることは違います。

私たち株式会社くるみは広告制作の相談を受けるとき、最初にどちらの話かを確認するようにしています。混ざったまま進めると、制作の話と運用の話が交互に出てきて、その日に決めるべきことが決まらないからです。

作る側と配信する側では、変わるものが違う

変わるのは、作る側では素材の量と速さ、配信する側では入札と配信先です。人の仕事も、作る側は選ぶ・止めるに寄り、配信する側はデータを渡すに寄ります。この記事は作る側を扱う構成にして、配信の話は別の記事へ回しました。

AI広告を、AIが作る広告とAIが配信する広告に分け、何が変わるか・人の仕事・この記事で扱う範囲を並べた表
この記事は「作る」側。配信を任せる話はAIマーケティングの記事で扱う。

配信をどこまでAIに任せるかは、それだけで一本分の論点になります。詳しくはAIマーケティングで扱います。

「AIが作った広告」を調べる人は、三つに分かれる

相談の入口は、だいたい三つに分かれます。自分たちで作りたい人、作ったところで効果が出るのか不安な人、規制や炎上のリスクを先に知りたい人です。

この記事は、その三つを順に受ける並びにしました。何が作れるかから始め、効果の話、差し替えの判断、リスクと媒体差、ツールの選び方まで通しています。

作る側に限っても、生成そのものは全体の一工程にすぎません。案を出す速さより、出した案をどう選び、どう検証するかで結果が変わります。

生成AIで何が作れるか:バナー・動画・コピー・LP

生成AIで作れるのは、バナー、動画、コピー、LP、AIモデルの5つです。どれも案を出すところまでは速く、その案を選ぶ工程は人の側に残ります。

私たちは制作に入る前に、この5つを並べて今回の対象を決めています。全部に手を広げると、確認の手間だけが増えて入稿が遅れるからです。

生成AIで作れる広告素材5つ。バナー、動画、コピー、LP、AIモデル
動画とAIモデルは権利と表記の確認が増えるので後回し。

バナーは、サイズ違いと訴求違いを同時に出しやすく、最初に着手しやすい領域です。詳しくはAIバナー生成。

動画は、尺と構成の案出しに効きますが、素材ごとに権利の確認が増えます。詳しくはAI動画広告。

コピーは、切り口の数を増やす用途に向いています。書かれた事実が正しいかは人が確かめます。詳しくはAIキャッチコピー生成。

LPは、構成案とセクションの下書きまでを出し、証拠と表現を人が詰めます。詳しくはAIによるLP制作。

AIモデルは、撮影を挟まずに人物ビジュアルを用意できる代わりに、確認事項がもっとも多くなります。詳しくはAI広告のバーチャルモデル。

AIモデル(人物素材)の扱い

人物素材では、肖像、誤認、表記を分けて見ています。肖像は、生成された顔が実在の人物に似ていないか、特定の誰かと結びつく指摘を受けないかの確認です。誤認は、実在のスタッフや利用者だと受け取られる見せ方になっていないか、体験談や推奨と読める文言が横に並んでいないかを見ます。表記は、AIで生成した人物であることをどこにどう書くかを決める工程です。媒体が用意するラベル機能で示すのか、自分たちの注記で添えるのかは、2026年8月時点では媒体ごとに扱いが違います。私たちは、これらが揃うまで入稿しない形に決めました。

制作コスト・工数・リードタイムの変わり方

減る工程と増える工程は対で動きます。私たちが見たのは、撮影の手配やスタジオの確保、出演者とカメラマンの日程調整、外注に出したラフの初稿待ちが減る一方で、生成物の権利確認、書かれた事実の裏取り、表記の付与、媒体審査に落ちたときの再提出といった確認工程が増える動きでした。リードタイムも同じで、案が出るまでは短くなり、出た案を決めるまでが長くなります。工数の総量が減るとは限らず、かかる場所が制作から確認へ移る、と捉えたほうが計画が崩れません。私たちは見積もりの内訳もその形に組み替えました。

生成の前に、何を比べるかを決める

素材が増えても、判断材料が増えるとは限りません。ブリーフ:何を比べるか、生成:案を出す、レビュー:事実と権利、入稿:表記を付ける、検証:差を読む、差し替え:次の仮説へ。私たちはこの6工程で回しています。以下では、この型を「生成AIクリエイティブ制作の6工程 — くるみの運用フレーム(2026年8月時点)」として、各工程で見るものを書きます。

生成AIクリエイティブの制作フロー6工程。ブリーフ、生成、レビュー、入稿、検証、差し替え
私たちの運用の型。生成の前に「何を比べるか」を決めないと、素材が増えるだけで判断材料が増えない。

最初のブリーフを飛ばすと、似た案が並ぶだけになります。後から見返しても、どれが効いたのかを読み取れません。

事例:EC事業者で、クリエイティブとLPを同時に見直した

数十名規模のEC事業者で、生成する広告クリエイティブの本数を増やしても遷移先が同じままだった状態を、私たちは見直しました。訴求ごとにLPの冒頭を差し替え、比較の単位をそろえるところから始めています。詳しくはAI広告クリエイティブとLP改善

事例:メディア運営会社で、企画から配信レビューまでを一本の型にした

百名規模のメディア運営会社では、企画・制作・配信レビューが別々の担当に分かれ、差し替えの判断が止まっていました。私たちは会議体と記録の形を決め、レビューを週次で回せる状態にしています。詳しくは企画・制作・配信レビューの運用基盤

いずれも匿名の自社支援記録であり、第三者による検証は受けていません。

AI広告は効果が出るのか:生活者の反応と実データ

効果が出るかどうかは、AIで作ったこと自体より、それが生活者に気づかれるかどうかで変わります。

ビデオリサーチは、ファストフード、ミネラルウォーター、旅行の3カテゴリーで、同じ写真をもとにした実写広告とAI画像広告を用意し、写真以外の条件をそろえて比べる検証を公開しています。そこでは、生活者が両者を見分けるのは難しい一方、AI画像広告だと認識された場合には購買・利用喚起の評価が下がる傾向が示されています(ビデオリサーチ)。

見分けの手がかりとして挙がっているのは、全体的な違和感と、人物や背景の要素でした。制作へのAI利用そのものにも、広告の無個性化への懸念と、先進的という評価が並んで出ています。

「AIっぽさ」は、品質の問題として扱う

私たちはレビュー工程で、AIで作ったかどうかではなく、違和感が残っているかを見ることに決めました。手や指の形、背景の繰り返し、質感の均一さ、文字の崩れ。この四つは指摘が集中する場所です。

気づかれた時点で評価が下がるなら、打ち手は二つに絞られます。違和感を減らすか、AIで作ったことを前提にした表現に振り切るかです。どちらつかずの素材が、いちばん読まれません。

検証は、AIかどうかで分けない

配信後の検証で「AI素材」と「実写素材」をまとめて比べても、次に何を直すかは出てきません。訴求か、形式か、遷移先か。差が出た層を特定できる単位で比べないと、判断が前に進まないからです。

私たちは自社の支援でも、生成の手段ではなく訴求と形式を比較の軸に置いています。手段は途中で入れ替わるものだからです。

AIクリエイティブをいつ差し替えるか

差し替えるのは、配信の数字が下がった瞬間ではなく、その広告が前提にしていた条件が崩れたときです。

私たちは、対象の状況、訴求、形式、遷移先の四つの層に分けて見ています。頻度や日数の固定した閾値は置かず、複数の兆候が重なったときに動かすと決めました。

AIクリエイティブを差し替える前に見る4つの層。対象の状況、訴求、形式、遷移先
頻度や日数の固定閾値は置かない。複数の兆候を組み合わせて判断する。

対象の状況が変わったとは、季節、競合の値付け、在庫や供給、報道など、広告の外側が動いた状態です。

訴求が合わなくなったとは、届いている層は同じでも、訴えている便益が今の関心とずれた状態です。

形式が見られ方から外れたとは、面や尺、縦横比、音の有無が、その媒体での見られ方と合わなくなった状態です。

遷移先が約束と違うとは、広告で伝えた内容とLPの中身がずれ、読み始めてすぐ離脱される状態です。

同じ素材の反応が落ちる現象は、切り分けて見る

四つの層のどれでもなく、単に同じ素材が見飽きられていることもあります。その見方はMeta広告(旧Facebook広告)のクリエイティブ疲弊にまとめました。

差し替えた後で何が効いたかを読むには、比較の設計が要ります。詳しくはクリエイティブのABテスト

案が増えるほど、回す仕組みが要る

生成AIで案の数が増えると、作る速さより判断の速さが詰まります。案が三十本あっても、見る人が一人なら、その人の処理量が上限になるからです。

私たちは、誰がいつ何を見て差し替えたかを残す形を決め、週次で見直す運用にしました。記録が残っていると、同じ議論を翌週にやり直さずに済みます。

この運用の組み方はクリエイティブ運用で扱っています。

AI広告のリスクと対策:炎上・権利・表記・審査

出す前に確認するのは、権利、薬機法・景表法、AI生成の表記、媒体の審査基準、炎上の芽の五つです。

私たちはこの五つを、入稿の直前ではなくレビュー工程で通すことにしました。入稿直前だと、直しが表現の調整ではなく素材の削除になってしまうからです。

AI広告を出す前に確認する5つ。権利、薬機法・景表法、AI生成の表記、媒体の審査基準、炎上の芽
2026年8月時点の考え方。法規と媒体ルールは変わるので、入稿ごとに確認する。

権利(素材・人物・商標)では、生成物の商用利用条件、実在の人物や既存の作品との類似、背景に写り込むロゴを見ます。

薬機法・景表法では、効果の言い切り、体験談の使い方、価格や比較の表示を見ます。景品表示法の法令とガイドラインは消費者庁が公開しています(消費者庁)。

AI生成の表記では、媒体が用意しているラベル機能と、自分たちで添える表記の両方を確認します。

媒体の審査基準では、同じ素材でも媒体ごとに判断が分かれる点を確認します。詳しくは次の節で扱います。

炎上の芽では、意図せず特定の属性を固定して見せていないか、加工が誤解を生まないかを見ます。過去の反応の集め方はAI広告の炎上にまとめます。

社内で使い始めるときは、工程ごとに使う人と確認する人を書き出すところから始めます。私たちが決めた順番は、まず使ってよい生成ツールと入れてよい情報の範囲を決める、次にどの工程で生成を使うかを工程表に書き込む、そのうえで権利・表記・法規の確認を誰が担うかを名前で割り当てる、最後に確認が終わった記録を残す場所をそろえる、という流れです。ルールを文章で配るより、工程表に担当の名前が入っているほうが守られます。担当が空いたままの工程が残っていれば、そこが後で止まる場所になります。

表現チェックは、制作者一人に持たせない

薬機法や景品表示法の判断は、2026年8月時点でも運用と解釈に幅があり、条文だけでは決まりません。私たちは、作った人とは別の人がチェックする形にして、判断の根拠を記録に残しています。

記録があると、指摘を受けたときに「なぜこの表現にしたか」を説明できます。生成AIで案が増えるほど、この説明のしやすさが効いてきます。

実務の進め方は広告表現チェックで説明しています。法規も媒体ルールも変わるので、入稿のたびに確認する前提で組んでいます。

媒体別の注意:Meta・Google・LINE・YouTube

媒体ごとに違うのは、AI生成であることをどう伝えるかと、審査で何を見られるかの二点です。

私たちは同じ素材を複数の媒体に出すとき、この二点だけを媒体別に並べて確認しています。素材そのものより、添える情報のほうが媒体差を生むからです。

Meta・Google・LINE・YouTubeの広告でAI生成素材の表記ルールと審査で見られる点を並べた表
2026年8月時点。各媒体の公式ヘルプで最新を確認する。

Metaは、業界標準のAI画像の指標を検出した場合や、投稿者がAI生成だと申告した場合に、動画・音声・画像へ「AI info」のラベルを付ける方針を説明しています(Meta)。審査では、誤認を招く表現が論点になります。

Googleは、広告ポリシーの不実表示で、操作されたメディアや誤解を招く表現、誇大な内容を扱っています。ラベルより、表現の中身がポリシーに沿っているかが問われます。

LINEは、媒体のガイドラインに沿った判断で、権利の処理と表現の両面が確認されます。

YouTubeは、実在の人物や出来事と誤認させうる改変コンテンツについて、アップロード時の開示が求められます。

ラベルは、付けて終わりではない

ラベルが付くと、見た人がAI生成だと認識した状態で広告に接することになります。効果の節で触れたとおり、認識された前提で成立する表現かどうかを、入稿前に見直す必要があります。

Meta広告(旧Facebook広告)でのラベルの扱いと入稿手順はMeta広告の生成AIクリエイティブにまとめました。

いずれも2026年8月時点の整理です。各媒体の公式ヘルプは更新されるので、私たちは入稿前に該当ページを開き直す運用にしています。

AI広告ツールの考え方

使うツールは用途ごとに分け、一つで全部をまかなおうとしません。画像、動画、コピー、LPで、見るべき条件が違うからです。

ツール名の一覧はここでは並べません。2026年8月時点で選んだ組み合わせが、半年後も同じ結論になるとは限らないからです。私たちは軸だけ決めて、案件ごとに選び直しています。

用途を問わず見る四つの軸

一つめは、商用利用と権利の条件が書面で確認できるかです。生成物を広告に使えるか、入力した素材が学習にどう扱われるかが書かれているかを見ます。

二つめは、自社の素材やブランドを持ち込めるかです。商品写真、ロゴ、色、書体を反映できないと、案は出ても入稿までは届きません。

三つめは、誰がどのプロンプトで作ったかの履歴が残るかです。権利や表現の指摘を受けたとき、遡れないと説明ができません。

四つめは、入稿の規定に合わせて出せるかです。サイズ、文字量、比率が合わないと、最後の手直しが人の作業に戻ってきます。

用途ごとの見どころ

画像は、同じ人物や商品を別カットで再現できるかが分かれ目になります。動画は、尺の切り替えと音声の扱いで手戻りが出やすい領域です。

コピーは、社内の禁止表現を登録できるかどうかで、レビューの量が変わります。LPは、出力が編集できる形で降りてくるかを見ます。

私たちは、この四つの軸で候補を二つまで絞り、実際の入稿物を一本通してから決めています。カタログの機能一覧より、入稿まで届くかどうかで差が出るからです。

個別のツールの使い方はAIでの広告作成とAI画像生成の広告活用で扱います。

AI広告に関するよくある質問

AI生成と分かると、効果は落ちますか

認識された場合に評価が下がる傾向は、公開されている比較検証で示されています。ただし、見分けること自体が難しいという結果も同時に出ています。AIかどうかより、違和感が残っているかどうかを品質の問題として見るほうが、手を打ちやすくなります。

「AIで生成しました」という表記は必要ですか

媒体によって扱いが違います。2026年8月時点では、AI生成の指標を検出したり申告があったりした場合にラベルを付ける媒体があり、改変コンテンツの開示を求める媒体もあります。入稿する媒体の公式ヘルプを、そのつど確認する前提で組むのが安全です。

生成した広告素材の権利は誰のものですか

使うツールの利用規約で決まります。商用利用の可否、学習への利用、独占的に使えるかどうかは、サービスごとに違います。加えて、生成物が既存の作品や実在の人物に似ていないかは、規約とは別に人の目で確認する必要があります。

実写とAIは、どう使い分けますか

私たちは、商品そのものを見せる場面は実写、状況や切り口を試す場面はAIで分けています。案の数を増やしたい段階はAIが向き、最後に信頼を担保する場面は実写に寄せる。この順番で考えると、判断が揺れにくくなります。

小さな予算でも試せますか

試せます。ただし案を増やすだけでは差が読めないので、比べる軸を一つに絞ってから始めます。訴求だけを変えた二案から入り、差が出た方向に次の案を寄せていく。この回し方なら、少ない配信量でも判断が積み上がります。

まとめ:仮説の差を増やす道具として使う

生成AIは、広告の当たりを引く道具ではなく、仮説の差を増やすための道具です。案を出す速さが上がっても、何を比べるかを決めていなければ、素材が増えるだけで判断材料は増えません。

私たちは、ブリーフで比較の軸を決め、レビューで事実と権利を通し、入稿で表記を付け、検証して差し替える。この順番を崩さないと決めています。

次の一手は、いま制作にかかっている工程のうち、どこをAIに寄せるかを一つ決めることです。全部を置き換えようとすると、確認の手間が先に増えて止まります。

制作業務のどこを置き換えられるかの切り分けはAIおきかえくんで診断できます。クリエイティブ制作そのものの進め方はAI広告クリエイティブにまとめています。